トップページ > 息子からの手紙


息子からの手紙『走れオヤジ・・・』

『小さい頃、走るオヤジが好きだった。
走りつづけるオヤジが自慢だった。
オヤジは速かった。オヤジの背中は大きかった。

中学受験を三日後に控えた日、大ケガをしたオヤジが帰国した。
身動きもできず、激痛にうめいていた。
160キロのスピードで砂の壁に激突したという。
バカだと思った。この大事なときにと思った。オレは自分の事で一杯一杯だった。
ところが、走ることしか頭にないオヤジは、走りたい一心で驚異的に回復し、
復帰第一戦で優勝してみせた。
オヤジは凄かった。オヤジはバケモノだと思った。

家ではあきれるほど間が抜けている。
情けないほど的が外れる。
カッコ良さなどカケラもないただのオヤジだ。
そんなオヤジがハンドルを握ると変身する。

高校進学の年、オヤジは再び大ケガをした。

この事故は、オヤジの環境も状況も立場も大きく変えた。
外では不死身といわれていたが、
肩を落とし、ため息をつくオヤジが家にはいた。
不安と迷いがオヤジの背中にはあふれていた。
見たくない背中だった。オヤジがキライになった。

だが、オヤジは強かった。走ることをあきらめなかった。
頑張る背中には、走りつづけてきた人生の勲章が光っていた。
その背中にオレは思う。
特別なことはしなくていい。一番を目指さなくていい。
疲れたら休みながらマイペースで夢に向かって走りつづけてほしい。

いつの間にか、オレはオヤジの背丈を越えた。
体力も気力もやがてはオヤジを抜くだろう。
いつかは、オヤジとソックリな背中になるのだろう。
だからこそ、オヤジ!男の背中を見せてくれ。
走れオヤジ!!

走りたいだけ
走りつづければいい。

〜篠塚建太〜

篠塚建太さんが、ラリーデビューをしました!>>

△ページのトップへ